(1)筋肉拘束とは
①粘弾性(ねんだんせい)
身体が柔らかくなるメカニズムとして「粘弾性の変化」というものがあります。簡単に説明すると「粘性が粘土」「弾性がバネ」のイメージです。筋肉はこの二つを合わせた粘弾性という性質をもっています。ストレッチにより張力が加わると、バネが引っ張られた状態 になり、まず弾性が高まります。次に粘土の粘性が低下します。ストレッチはこの過程を経て、筋肉の柔軟性が高まります。
②筋肉拘束二つのタイプ
・固太りタイプ
「慢性緊張で、縮み固まったカチカチ粘土」「圧縮で縮んだまま固まったバネ」
・痩せた老人タイプ
「運動不足で、痩せて弾性がなく乾いて張り付いたような粘土」「錆びついたバネ」
多くはこれらが複合的に合わさり、動きを阻害する全身拘束となっています。筋肉は凝りや固まりがなくても、使われなさすぎて萎縮、退化している部位があると「痩せた老人タイプ」の様にサランラップで密閉されたかのように柔軟性を奪い、関節運動を妨げ、全身拘束の一つとなります。
粘土とバネのイメージをもとにストレッチを考えて見てみると、「縮み固まったカチカチ粘土」「痩せて弾性がなく乾いて張り付いたような粘土」を引き伸ばしても柔らかくなることは想像できません。むしろ、無理に引っ張ると、組織を痛め壊してしまいます。
③ストレッチが有効な場合
高齢者の歩行運動に関して、ストレッチが有効という調査があります。平均年齢65歳前後の50名を対象に行われたこの調査では、速度、歩幅の向上と両脚支持時間の減少など、いずれも改善が見られました。この時行われたストレッチというのは、股間節、足関節の屈曲・伸展です。
これは脚三関節の本来の機能を回復し、動きを良くした関節機能回復運動により、歩行がスムーズに行われた結果であると思われます。決して、180度開脚をしたり、前屈をしたのではありません。
このように、明確な理論と目的があり、それに合った関節運動を促す事が出来た場合は良いのですが、とにかく柔らかければ良いとばかりに、ストレッチを継続することは「害」になります。特に目立つのが
・得意なところばかりが伸ばされる
・左右均等にこだわるあまり、動きの悪い方が無理やり引き伸ばされる
・筋肉の弾力低下
等です。また、筋肉組織を無理やり柔らかくしようとして、強く揉み続けたり、棒などで押し潰す方もいますが、これでは組織にダメージを与えてしまいます。