個別指導「腕の使い方と歩き」 ピアノ講師 Oさん 60代女性
子供の頃、Oさん自身が習っていたピアノの先生から「お化けの手」をする様にいつも指導されていました。腕肩の力を抜くには良いのですが、僧帽筋主導の動作は変わりませんでした。
後頭部から首肩へと繋がっている僧帽筋群は、重たい頭を支えるのにほぼ慢性緊張を強いられています。そのため、動作の中心になりやすく、本来なら必要のない時でも働いていることが多々あります。
その場合「動作意識点」が重要になります。実際に動く場所(可動部位)と、動かすときに意識する場所(動作意識点)を分けてトレーニングすることで「必要のないときに働いてしまう僧帽筋」などを「働かせなくすること」が可能になります。
対象物や目的により動作意識点は変わりますが、手を使う動きは腕を上げる動きになるので、主に指先か、手首が動作意識点になります。
これらのことを踏まえて、手首を意識して(動作意識点にして)腕の上げ方を行いました。
繰り返すうちにOさん、まず肩を動きの中心とした僧帽筋主導に気付きました。そのまま繰り返し続けていくと、次第にいつもと違う筋肉の流れで腕が動くのを感じ始めたOさん。
「あ、ホントだ!すごいすごい、なるほど」
「子供の頃、お化けの手で力をぬくことは教わっても、意識する場所がわからなかったから、結局変わらなかったんですね。でも今来てる子供達には教えられます、良かった!」
Oさん、歩き始めの初動にも僧帽筋の影響が大きく、肩を上げて脇を開け、肘を張っていました。その不自然さから、僧帽筋拘束と腕の使い方についての冒頭の話になったのですが、腕の上げ方の練習後、脇の開いた不自然な緊張に気付けるようになり、腕を自然に垂らした状態の歩きに変化しました。
実際は、Oさんの僧帽筋主導の状態は加齢と共に、脇空き肘張りの形に向かっていきます。自転車走行中の高齢者のほとんどが、この腕の状態です。
ハンドルを握りバランスを取りながら走る行為は集中力と緊張が必要です。それがあの形になる様子を見る度に、ヒトにとって僧帽筋の慢性緊張は腕の動きだけでなく、生き物としての形状をも変えうるものなんだなと思います。